普通二輪⑤

その後の第一段階の教習は、あまり詳細に覚えていません。


できないながらも課題は進み、スラローム、クランク、急制動体験など、やるべき項目は増えていきます。


先に書きましたが、この教習所では一つの課題をきちんとクリアして次に進む、というよりは、とにかく一通り教えて、あとはコースで走る中でできるようになっていく、という方針のようでした。
もちろん、要所要所で教官からのアドバイスはありますが、系統立てて教えてもらった、ということにはならないと思います。


私の教習簿は途中からずっと第一段階見極めで留め置かれている状態になっていました。


雨の日に受けたシミュレーター教習で一緒だったのは、私と同年代かもう少し上と思われる男性と、30前後と思われる男性でした。
年配のほうの男性は、ちょいワル風に無精ひげで、服装も派手な刺繍のあるジーンズなどはいておられ、これは私の勝手なイメージですが、いかにもハーレーとか乗り回していそうな雰囲気の人です。普通二輪の教習と聞いて少し意外に思いました。


ある休日の昼間の教習で、シミュレーター以来でその男性と一緒になりました。


「だいぶ教習進みました?」と向こうから声をかけてくださいました。

「いえ全然。みきわめもまだまだです。」

「僕もですわ。一本橋がなかなかうまくいかなくて。」


その日は途中から、その男性と私の二人で一本橋特訓(?)を行うことになりました。


「お二人とも、足がバタバタしている。仮に一本橋が渡れたとしても、それはたまたまでしかないし、カッコよくないです。」

と教官に言われ、二人で教官が走る後ろをついて、センターライン上とか、スラローム横の一本橋よりは幅のある縁石上とかをぐるぐる走っていきます。


一本橋はニーグリップが大事、と教えられていましたしブログや動画などの自主勉強でも理解はしていましたが、この練習方法では教官についていくのが精いっぱいでニーグリップを気にするどころではなく、私には逆効果でした。
私の前を走る男性は、少なくとも私よりはラインをなぞることができているように思いました。


一本橋はそれでも成功率50%以下という感じです。


「失礼だけど40過ぎると皆さん一本橋苦労するんですよ。バランス感覚が落ちるんですね。」

と教官から言われ、失礼とも思えず二人でうなだれて教習終了です。


たぶん、あとは回数をこなして自分でコツをつかんでいくしかなさそうだと、長期戦を覚悟しました。