大型二輪③

翌日の2時間目、3時間目は連続教習になりました。


1時間目の教習終わりに、S字クランク一本橋を通るコースを覚えてくるように言われています。まず、そのコースを回りました。


2時間目の教習の終わりかけに、一本橋で脱輪し、そのまま転ぶという最悪の転倒をしてしまいました。
しかも、転んだ体勢がわるく、横にあるもうひとつの一本橋の上に胸部をぶつけるという、なんとも無様な転び方です。
同時に左手を変にねじったか打撲したらしく、手首から親指の付け根にいやな痛みがありました。


短い休憩をはさんで次の教習です。
左手の痛みでクラッチが握れるか不安でしたが、何とか大丈夫そうでした。


しかし、緊張と疲労で集中力が無くなっており、ウォーミングアップ後に停止した際に、同じ教習グループになっていた大型第二段階みきわめの男性のバイクに近づきすぎてしかも転倒して巻き込む、という迷惑をかけてしまったりして、なんとも情けない状態でした。


この時間はさらにスラローム、坂道発進、急制動も行いました。


スラロームもこわごわなのですが、やはりトルクがある分、アクセルを開けなくても通りさえすれば7秒台が普通に出ることに驚きました。
坂道発進も特に問題ないようでした。
急制動も、コースが比較的直線であること、何より40キロを出すのに苦労することが全くなく、改めて大型バイクの力に感心しました。
急制動も、最後に右足をついてしまうことが無くなれば、問題なく行けそうでした。


ただし、この自動車学校は一本橋だけでなく、スラローム、この後行う波状路もそれぞれタイムが表示されるので、特にスラロームのタイムがこれから大きく立ちはだかってきそうです。


最後に教官から、「連続の教習がしんどかったら、途中1時間休憩を入れるか、1時間ずつにするかにしたほうが良いですね」といわれました。


早速、1日あたりの教習を1時間までにしてもらうようにスケジュール調整をスマホのアプリから依頼すると、その日のうちに新しい教習予定が組まれてきて、「オーダーメイド最強!」と感動しました。


左手の痛みはその後どんどん強くなり、腫れも出てきてしまいました。
ひょっとすると骨までやっちゃったかも、と不安になりつつ、骨折やひびの診断になってしまうと仕事にも大きな支障が出てしまうので、自分で固定して安静を心掛けることにしました。
幸い、翌週の仕事の予定はさほど忙しくなく、私がどうしても入らないといけない手術もなかったので、何とかなりそうでした。


改めて、けがは患者さんや同僚に大きな迷惑をかけることになってしまうので、重々気を付けようと気を引き締めました。

大型二輪②

今回は、自宅からも職場からも同じくらい遠いという立地の自動車学校なので、基本的に夜間の教習ではなく、週末のみで教習を受けていくつもりでした。


スケジュールを登録し、教習プランを立ててもらうと驚いたことに翌週末から早速教習スタートになっていました。


初日の担当はわりとベテランな感じの教官で、マンツーマンでした。
私の年齢をみて、「来たなアラフィフ!」と思われたのかもしれない、と勝手に想像しました。


バイク置き場から、少し先までバイクを引いてくるように、と言われ途端に困りました。
実は、前の教習所では教習生がバイクを引いて移動させるという場面がなく、基本的な技能なのでしょうがバイクを自分で押して歩いたことが一度もなかったのです。


何とかスタンドを払い、よっこらしょとバイクを押し始めますが、案の定転倒させてしまいました。


早速引き起こしです。


教官が「お手並み拝見」的に横で様子を見ているのがわかり緊張しました。
ところが、あっさりと引き起こせてしまったのです。
自分でも「あれ?」と思いました。

一瞬、横にいる教官が手を出してくれたのかと思ったのですが、その日何回かあった引き起こしは、すべてあっさりと自力でできてしまいました。



「引き起こしのしやすさ」という項目がメーカーの仕様書にあるわけではないので真偽はわかりませんが、夫曰く、大型二輪の教習車NC750は、普通二輪の教習車CB400よりも重心が低いから引き起こしがしやすいのだろう、とのことでした。


引き起こしの劣等感をずっと引きずり続けてきた私ですが、ここにきて払拭されるとは思っていませんでした。

もし、引き起こしができないからという理由で大型二輪教習をためらっている方がいらっしゃったら、「大丈夫です」と大きな声で励ましたいと思います。


とにかく、よたよたとバイクを押し、何とかまたがりエンジンスタートです。


足つきは、普通二輪の教習車より若干悪いかな、という感じでした。

身長160センチ弱、昭和の日本人体型(足が短い)の私で、つま先立ちより少しだけ余裕があるという状態です。

普通二輪の時はハイカットのスニーカーを履いていましたが、今回からバイク用のショートブーツにしました。

多少高さもあるので、靴が同じだともう少し足つきが悪く感じたかもしれません。
ショートブーツにしたメリットとしては、足首ががっちりしているので、割と踏ん張りがきくように思えたことでした。


そして、いきなりエンスト2回です。
先導する教官の様子が明らかに不安げになりました。


何とか走り始め外周など周回して右左折、発進停止(ふらついて時々転倒)、それからS字、クランク、は何とか通過できました。
最後に一本橋も、タイム無視でとりあえず通過、大丈夫でした。


大型はトルクがある分、半クラッチの低速でも比較的ふらつかずに安定した操作ができそう、と感じました。
普通二輪ではあれほど苦手だったクランクでしたが、コース設計も関係しているのか、ここでは失敗する気が全くしませんでした。


教官からも最後に「はじめは時間かかりそうだな、と思いましたけど、最後の追いつきは良かったですね」とコメントをもらい、無事1時間目が終了です。


「大丈夫かも」と思えた初日でした。

大型二輪①


申し込んだのはかなり大規模な教習所、というよりはいかにも「自動車学校」といったほうがしっくりくるところでした。


申し込みも予約制になっており、Webで申し込んだ返信の予約確認メールに「引き起こしがありますからサンダル以外の履物で来てください」とあり、一気に気分が暗くなりました。


やっぱりあるんだ。


実はこの自動車学校は、普通二輪教習1限目でKさんから「引き起こしができなかったら門前払い」と例えに出たところなのです。


申し込みのための予約の日時のことでその自動車学校の二輪受付に直接電話をしました。
ついでに、「あの、引き起こしがあるって書いてあるんですけど、引き起こしができないと入学できないってことでしょうか?」と尋ねてみました。
割と軽い話し方をする男性(たぶん教官)が、「いやー普通二輪の免許を持っていらっしゃるから、どちらでもいいですよ。全く初めてバイクに触る人には、手始めにって感じでやってもらいますけどね!ここでできなくても、教習進めるうちにできるようになってくださいってことで!」との答えでした。


うーん私免許は持ってるけど引き起こしができないんです、とは言えませんでした。


申し込み当日、受付を担当してくれたのはてきぱきとした様子の事務服の女性でした。
「安心プラン」は当然として、こちらのスケジュールに合わせて教習予定を立ててもらえるという「オーダーメイドプラン」というものも一緒に申し込みました。


卒業生ではないので、ほとんど割引はなく、前の教習所にそのまま申し込む場合の費用の約2倍の料金になってしまいました。
しかしもったいないとは思いませんでした。
気分を一新して、自分のペースで楽しく教習できるならそれに越したことはないと思ったのです。


込み合っているので、実際の教習開始は2週間後以降になる、と案内を受けました。


最後にその女性が「それから、引き起こしの体験なんですが、どうされますか?」
「選んでいいなら、今日はやめておきます。雨ですし…教習の中でやっていくということで…」
「わかりました。」


あっさりスルーです。


私、引き起こしができない女なんですけどすみません、と胸の中でつぶやきました。